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「日本ならではの政策デザインのあり方とは?」〜Venture Cafe Session Report〜

みなさん、こんにちは!JAPAN+Dの水口です。

少し間が空いてしまいましたが、今回の記事では、2022年10月27日にVenture Café Tokyoにて実施したイベント「日本ならではの政策デザインのあり方とは?」のレポートをお届けできればと考えています。

政策とデザインってどう繋がるの?

まずは、モデレーターである水口から、政策デザインに取り組む背景について改めて共有させていただきました。

VUCAと呼ばれる時代の中で、政策に関わるプレイヤーも多様になり、前例主義や単線的未来を想定したアプローチだと限界を感じています。

そんな中、デザインアプローチのように当事者の目線でしっかりと課題設定の部分から取り組んでいく手法こそ今の変化する時代においては必要ではないか、ということで政策×デザインの接点を模索していているところです。

Plan Dを模索する”ウロウロアリ”

その中でも、我々はよく「ウロウロアリ」というモチーフを引き合いに出していますが、アリのエコシステムも働きアリに加えて、新たな餌場を探すウロウロするアリがいることで種としてのエコシステムが機能しているという考えがあり、まさに政策デザインはそうした新たな政策のタネを探す、探索活動でもあると考えています。

こうした政策デザインに関する想いについては、こちらのnoteでも紹介していますので、もしご関心あればご覧ください。

ターゲットを考え抜くことで仕様書の質が上がる

その後、ともに登壇した経済産業省 / JAPAN+Dメンバーの海老原、一般社団法人STUDIO POLICY DESIGN / JAPAN+Dメンバーの橋本からも自己紹介をいただきながら、パネルディスカッションに入ってまいりました。

まずは、海老原から先日JAPAN+Dとしても訪問させていただいた佐賀県が取り組む「さがデザイン」の話に。

さがデザインについて(HPより)

佐賀県では、山口知事の「物事の本質を突くデザインの力を政策に活かせないか」という想いのもと、部署としてのデザインチームを立ち上げて、デザイナーとのコラボレーションにとどまらず、政策立案そのものへのデザインの考え方を浸透させていっています。

「目的ななにか?」「コンセプトは何か?」これはさがデザインの方が県庁職員によくする質問だそうです。
ここがまさに政策の本質ではないか、そうした時間やノウハウを蓄積していくことが行政に求められているのではないか、という点を改めて訪問して感じているということでした。

また、訪問の中でも印象的なエピソードとして、定量的な評価が難しい中、定性的に成果を実感しているのが「仕様書のクオリティが上がった」ということでした。

行政の中では、事業を発注する際に「仕様書」を書き下しますが、ターゲットが明確になったことで何をやりたいのかがはっきりし、目に見えて質が上がっていったようです。
こうした変化も上流からデザインアプローチが入り込んで行っているからこそだな、というのは聞いていて実感したところでもありました。

「デザイン」という言葉を取り立てて使わない

その後、橋本からデザインアプローチを先進的に取り組むイギリスやデンマークについて、出張を踏まえたレポートをいたしました。

まず、イギリスの取組として「国民目線で見ると複数の政府サイトが乱立していてわかりづらい」という課題から立ち上がったGOV.UKを紹介してもらいました。

GOV.UKのサイトデザインとオフィスの様子

実際に現地でサイトの立上げ経緯を聞いてみると、なんと3ヶ月でまずは作り上げてローンチしたということで、日本の行政を考えるとなかなか考えられないスピードだなと驚きでした。

また、ユニークな取組として「ユーザー満足度」といった目標を達成した際に見える形で評価をすべく、ワッペンを目に見える形として飾っているようです。
利用する国民目線ももちろんですが、それに従事する職員のモチベーションも高めるようなプロジェクト設計をしているという観点でも、非常に参考になる事例だと感じました。

デンマーク政府の

その後、デンマークの取り組みとして、各省庁のロゴが王冠をベースにリデザインされている事例やデンマーク版のマイナンバーカードを交付する際のパッケージデザインの事例の紹介へ。
(なお、これらのデザインは世界的に有名なLEGOのデザインを手がけたボー・リンネマン氏によるものとのことです)

これらの事例を通して、「デザインと行政が密着していること」そして「行政がサービスを使う側の目線に立って1つ1つの所作から意識していること」を感じられたとのこと。

また、セッションの中で印象的だったが、イギリスやデンマークでは「デザインという言葉を取り立てて使わず、当たり前のことだと考えている」という点でした。
行政のスタンスとして、補助金や制度などさまざまなサービスを提供しているものの、その前提としては税金を国民からいただいて運営しており、そうした対価としてのサービス提供のあり方を考えると、デザインアプローチの基本である相手の立場にたつ、ということは自然なこととしてインストールされているようです。

行政の中と外の多様性にどう向き合うか?

最後に、セッションのテーマでもある「日本ならではの政策デザインのあり方」について各人からコメントをもらいました。

私、水口からは行政だけではなく、日本全体として失敗してはならないというプレッシャーがある中だからこそ、物事を決める上流から多様な方々にディスカッションに入ってもらい、ああでもない、こうでもないという自由な議論を引き出せるデザインアプローチが適用できる可能性があるのでは、という考えを述べさせてもらいました。

また、海老原からは、そもそもデザインアプローチを導入する前提として、行政の中のダイバーシティを確保すべきでは、というコメントがありました。
行政官同士だけだとどうしても同調圧力のような物を排除することができず、海外の行政組織がワークしているのも職員の多様性があるからではないか、行政の中の多様性がますことにより、結果としてデザインアプローチの行政への導入も進むのではないかとのことです。

この点は、こちらのnote記事でもお届けさせてもらいましたが、イギリスをはじめとして複数の行政の中のデザイン組織で多様性はキーワードになっていました。

そして、橋本からは、行政の中の多様性に加えて、政策の対象者自体も多様化していることも改めて認識した方が良い、という点について指摘がありました。
〇〇産業といった特定のセクターを切り出した従来型のターゲッティング自体が機能しなくなりつつある中で、これまで政策の対象にしていなかったけど、これから巻き込んでいくべき層を考慮していきたいということでした。

実際に、特許庁では、I-OPENプロジェクトと称して、これまで対象にしていなかったNPO法人や社会起業家を特許申請主体としてサポートする施策を展開しているとのことで、こうした新らしい芽も行政の中では生まれつつあるということを実感もいたました。

行政の中と外、両面としての多様性にどう向き合うかがこれからのキーワードになってきそうです。

Venture Café Tokyoの皆さまに改めて感謝を!

以上、イベントの様子をお届けいたしました!
今後も引き続きこうしたイベントのご案内やレポートもこちらのnoteで発信していけたらと思い、ぜひまた覗きに来てもらえると嬉しいです。

それでは、また次回の記事でお会いしましょう!

水口 怜斉(みずぐち りょうせい)
杉原千畝氏の伝記がきっかけで国家公務員に関心を持ち、2017年に経済産業省に入省し、スタートアップ支援や起業家育成、2025年大阪・関西万博関連業務、10兆円規模の大学ファンドの立ち上げに従事。現在はヘルスケア産業の振興を担当し、介護政策や医療の国際展開、ヘルスケアスタートアップ支援に取り組む。個人として、美大生と国家公務員との共創コミュニティである「美大生 x 官僚 共創デザインラボ」や全省庁横断の広報勉強会「霞が関広報の会」を運営。行政との気軽な接点を増やし、政策への関わりしろを広げていくためにJAPAN+Dプロジェクトに参画。趣味は登山とサウナ。

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