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人に寄り添うやさしい政策へ JAPAN+D 成果報告会を開催しました(前編)

はじめまして。JAPAN+Dプロジェクトチームの金子です。

私は経済産業省8年目の職員で、現在は産業人材課でリスキリングの支援等を行なっています。その中で、個人に寄り添った政策の作り方に悩んでいた中で、2月に開催されたDialogue Vol.1に参加したことで、JAPAN+Dに関心を持ち、メンバーとなりました。

そんな私が2ヶ月後に発信する側となっているのは少し不思議ですが、「デザインアプローチはハードルが高い気がする。」「プロのデザイナーでないとできないのではないか。」と感じられているような方のハードルが少しでも下がり、行政へのデザインアプローチがもっと当たり前になるといいなと感じています。

さて、今回の投稿では、先月開催し、4月14日に配信された2022年度の成果報告会「人に寄り添うやさしい政策へ」についてご紹介させていただきます。Part3までありボリュームが多いので、前編と後編に分け、私からはPart2の途中までをご紹介します。

なお、当日の様子はJAPAN+D ちゃんねるにて公開中ですので、ぜひご覧ください。

(1)Part1 人に寄り添うやさしい政策へのあゆみ
~JAPAN+D2022年度の活動シェア~

Part1では、JAPAN+Dのメンバーから2022年度の活動の振り返り・シェアをしました。
【登壇者】
水口 怜斉 (経済産業省)
平山 由佳 (経済産業省)

はじめに2022年度の取組の全体像を紹介しました。2022年は2021年度に掲げた政策づくり組織づくり仲間づくりについて、アクションを重ねていく年になりました。政策づくりについては経済産業省の課室への伴走支援、組織づくりは教育コンテンツの作成やその活用、仲間づくりではJAPAN+D Dialogueや他省庁との連携始めとしたコミュニティづくり等を進めました。

次に、水口から政策作りとして進めた、政策立案手法に関する海外の先行研究の調査について、紹介しました。この研究からわかる大きな気づきは、共創や実験を通じた政策形成・イノベーションの創出が主要なテーマになっているという点です。
また、政策を取り巻く3つの環境変化と、海外の組織がどのようなアプローチで取り組んでいるのかという点について、次のように整理しました。
① 複雑性→真の課題を問い直す
② 多様性⇒多様な人に共感し届ける
③ 不確実性⇒実験し改善し続ける
その他にも、デザインアプローチが既に適用されている分野(マイノリティ支援やサービス開発等の領域)や、デザインアプローチと他の手法(EBPMやアジャイル手法)の組み合わせの重要性についても、調査を通じて気づきがありました。

水口、平山のディスカッションの中では、実際にデザインアプローチを進める中で、手法に加えて、ユーザーに心を開いてもらって、本音で話してもらうための態度や雰囲気づくりの重要性も確認しました。

最後に平山から、組織づくりとして進めた、教育コンテンツの紹介を行いました。教育コンテンツについては、JAPAN+D ちゃんねるにて掲載しています。教育コンテンツは、デザインアプローチに必要な、探索→問い→共創→改善→実装のプロセスを学んでいただけるものになっていますので、ぜひ使ってみて下さい。一人でも、チームでも使っていただけるものになっています。

graphic recorded by Yusuke Watanabe

(2) Part2:人に寄り添うやさしい政策づくりへの挑戦
~政策へのデザインアプローチ導入思考の結果~ 前編

Part2前半では、2022年度の取組の目玉である、政策アプローチへの導入事例づくりについての報告を行いました。

(2−1)伴走支援のコンセプト

はじめに、JAPAN+Dと実際に伴走を行ったKESIKIのメンバーから、伴走支援を行った経産省の社会室(経済社会政策室)と技協課(技術・人材協力課)のプロジェクトについて、背景やゴール、プロセスについて紹介しました。
【登壇者】
国枝 将太 (KESIKI)
大貫 冬斗 (KESIKI)
【モデレーター】
沼本 和輝 (経済産業省)

2つの課室はどちらも、「人に寄り添うやさしい政策づくり」を作るために、未来の探索~共創・改善までのプロセスを進めた事例です。

社会室では、女性活躍に留まらない将来のダイバーシティ推進の政策の方向性を考えるために、次のようなプロセスで進めていきました。
①短期~中長期でダイバーシティを取り巻く環境がどう変わるのかを検討し、ビジョンを設定。
②既存の政策を、「なぜ」「誰に」「何を」等の指標で評価。
③政策の羅針盤となるコンパスを策定。中心にビジョンを据えて、外側が指針とそれに紐づく問いを配置する形に。
④企業への展開可能性の模索

技協課は、日本企業の海外事業展開を「技術協力」の視点で支援を支援している課で、2022年度は「高度外国人材」に焦点を当てて次のようなプロセスで政策を推進しました。
① 政策のゴールや手段を1行で表現
② 高度外国人材の採用ポテンシャルのある企業の検討。
③ 高度外国人材の採用を進めている企業と、検討段階の企業からヒアリングし、高度外国人材の採用のステップを整理。
④ ユーザーリサーチの結果をポータルサイトに整理。自社に近い企業や、伴走支援の方法を探せるコンテンツを掲載。

上記のように書いてみると、計画通りに進んだような印象かもしれませんが、例えば社会室では最終ステップの企業への展開可能性については、検討を深める中で初めて出てきたアイデアである等、ゴールありきではない、どうなるのか最後まで分からないデザインアプローチらしさが表現されたプロジェクトであったと感じました。
2022年度はプロトタイプまで進みましたが、私自身、これらのプロジェクトが今後どのように実装されていくのか、とても楽しみです。

(2−2)伴走支援の内容

次に、JAPAN+Dメンバーから、組織のマインドチェンジやチームビルディングを目指した、金属課・ヘルスケア産業課・法務省の事例を紹介しました。
【登壇者】
橋本 直樹 (デジタル庁)

これらの3部署については、未来の探索から問いの設計までのプロセスを支援しました。
未来を探索するワークでは、社会の変化の兆しをピックアップし、10年後のニュースを考えるワークを行った結果、
・住所がなくなるような未来(法務省)
・火星での金属の地産地消が行われる未来(金属課)
・人体改造が当たり前になる未来(ヘルスケア産業課)
といった、「いったん発想を飛ばしてみる」未来像が出てきました。

その後の、当事者を検討し、政策アイデアに落とし込むワークでは、
・トランスジェンダー等の社会的マイノリティの方が匿名性を持った形で刑務所での指導を受けられる政策(法務省)
・おしゃれな女性がファッションとして使えるような金属製品の開発(金属課)
・スポーツ分野等の型破り人材が社会に関わることの支援(ヘルスケア産業課)
といった、ターゲット、アプローチ方法ともにエッジの立ったアイデアがいくつも出てきました。

graphic recorded by Yusuke Watanabe

(3)後編に向けて

後編では、上記で挙げたプロジェクトについて、実際にデザインアプローチを導入した課室から、気付きや感想についてご紹介いただいたほか、JAPAN+Dのメンバー(私も登壇しています!)からデザインアプローチへの思いや2023年度に向けての豊富を語るなど、こちらも盛りだくさんですので、ぜひご覧ください。

~スタッフ~
モデレーター:水口怜斉(経済産業省)、平山由佳(経済産業省)
PART1:沼本和輝(経済産業省)、KESIKI 国枝将大さん、大貫冬斗さん
PART2前半:橋本直樹(デジタル庁)、沼本和輝(経済産業省)、KESIKI 国枝将大さん、大貫冬斗さん

現地バックアップ: KESIKI 九法崇雄さん、中村寛さん、久保田耀介さん
FIELD MANAGEMENT EXPAND 伊藤拓馬さん、足利洋城さん
グラフィックレコード:株式会社cocoroé 渡辺祐亮 さん